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種苗法と育種について  ー その2

品種登録制度が発効した後、種苗会社の農家(違法増殖生産者)への品種権利の取り締まりは行われていましたが、既存の種苗会社(元々農家を相手に種苗を販売していた会社)は、 農家が違法で増殖して販売していても最大で「その種苗の本来支払うべき代金」を上限としていました。
ところが農業以外から参入してきた種苗会社(いわゆる異業種から参入した企業の種苗会社)のやり方はそんな生易しいものではありませんでした。 工業製品の違法製造の時の対処法から来たのだと思います。
例えばある農家が100万円分の苗を違法に増殖して栽培していたとします。それが出荷が近くなり市場価格が1、000万円の商品の鉢花になったとします。 そのタイミングでGメン(種苗管理担当者)が調査に来たら大変なことになります。「この鉢物を明日中に全てごみ穴に廃棄しなさい。さもなければ裁判にかけさらに高額の損害賠償を請求します。」 「そちらが裁判を起こすなら受けて立ちます。」というような厳しい対応だったと聞いています。
私は当事者にはなったことも直接見たこともありませんが、そのような事例がいくつかあったようで、いわば見せしめの意味合いで行われたということでした。 しかしこれは非常に効果があり違法増殖は急激に減っていきました。 こんなこともあり今までの農業界の常識、いえかなりの日本人の常識が急速に置き換えられていきました。
どうも今回の種苗法改正においてもアメリカの影響力を感じないわけにはいきません。世界経済は大枠ではアメリカの主導で進められているのが現状です。 それは農産物の世界でもアメリカには世界戦略があり種苗の世界ももちろんその一つの重要な分野だからです。 食料など重要な農産物の品種権利を押さえることは世界戦略上大変重要だからその仕組みを世界中に広げようとしているのではないでしょうか。 だからと言って自分たちに何ができるのでしょうか? それでも絶望的な状況かというとそんなことはありません。 もちろんアメリカをはじめ他国の重要かつ得意分野は日本も国を挙げて取り組まなくては到底対抗できません。 農業の問題も長期的に考えればみんなで知恵を出してどのような方向に進めばよいのか? ある意味どう戦っていくのが良いのか?政治の判断になりますが自分たちの意見を政治に反映できるようしっかり意思表示することが大切になります。
現実に今自分たちは何ができるのでしょうか?大きなマーケットは資金力が物を言います。しかし小さいマーケットにはそれなりの戦略が可能です。 自分の得意分野で得意なものをしっかり伸ばす。負けない戦いかたは出来るはずです。 またビジネスと考えた場合いかにオリジナリティを出すかということが大切になると思います。オリジナリティを出すということは色々な方法があります。
オリジナル品種を開発するという方法。
他の人が開発した品種をいち早く栽培させてもらうという方法。
同じ品種でも栽培技術やパッケージ等でオリジナリティを出す方法。
品種権のかかっていない在来種を集めて作ってみる方法。などいろいろあると思います。
私は最初の方法でオリジナル品種を開発して差別化を図る方法をとりましたが、(右 これもラナンキュラス 品種名 イオ)
それぞれの経営者が一番良い方法を模索し実行していくしかないと思います。
少しでも自由に作れる作物を確保しておきたいならばとりあえずは各地の在来品種を出来るだけ多品目・多品種大切に作り続け守りましょう。少量でも良いので絶やさないように維持することが大切です。 在来品種は一度失ってしまえば二度と手に入りません。それ自体が貴重な財産ですから。そして昔から作り続けている証拠をしっかり残しましょう。 (市場の売り立て票などでも良いのではないかと思います)これらは一人ではかなり難しいので産地として取り組むことが大切だと思います。

今回種苗法が改正されると農家の自己増殖がかなり制限されるということで農家や消費者から心配の声が上がっています。 ある方から「種苗法が改正されるとアメリカが日本中の植物を特許で押さえてしまい農家は特許料を払わないと何も作れなくなるのではないかと危惧している」と聞かされ唖然としてしまいました。 確かにその可能性はゼロではありませんが、ほとんどあり得ません。そんな小さいマーケットまで莫大な経費をかけても何の得にもならないからです。
ただもっともっと大きな戦略で次の世代のことまで考えて、まだ私たちが想像もできないようなことまで考えての戦略があるかもしれません。 その投資効果があるという確信が持てた時実行してくるということでしょう。その日が来るのか来ないのか神のみぞ知る世界です。とりあえずは考えないことにします。 私はもう古い人間の仲間になっていますが「植物を一所懸命交配したり、作物を注意深く観察して選抜したり、そのような植物とある意味対等な力関係で努力をして作り上げた品種。それを守るために品種登録する」のと 「自然にはほとんど起こり得ないことを科学とバイオテクノロジーにより実現してしまう。例えば遺伝子を組み替えたり、取り込んだり、さらにはDNAそのものを作ってしまう手法や元々自然界にあるものを調べてその性質(DNA)をいち早く解析し、 その遺伝子は私のものです」と言って登録したりするのとは本来意味合いは違っていたと思います。しかし科学とバイオテクノロジーの著しい進歩で最早その違いを明確に区別することは出来なくなっています。区別できないということは同じこととみなさなければならないということだと思います。 そして神が作ったのではないかと思える程の自然の法則に人類が地球上で初めてそれを変えようとしており、おそらくその誘惑に人類は勝てずに暗中模索のまま未知の領域に入っていってしまうのでしょう。DNAが解析でき、個々の遺伝子の働きが解明でき、DNAそのものを作り出せたとしても、 まだまだ生命のほんの一部しかわかっていないことを認識して研究開発を進めてほしいものです。
話を少し戻します。先に品種登録はそんなに簡単ではなかったと言いましたがどういうことだったかお話します。 私が最初に品種登録に挑戦したのは平成4年のことで切り花カーネーション4品種を申請しました。

(左 当時の写真)

名前は綾町役場が公募してくれて、「綾乙女」、「綾小町」、
「綾レディ」、「綾華」でした。
問題だったのはその申請書を作る作業でした。 特性表というものがありこれを解読するのが超難題でした。 植物体を前にして書類とにらめっこです。しかしいくらにらんでみても一向に作業は進みません。
植物は日々変化成長しています。
例えば茎は固いですか?と質問されたときに自分の感覚では「この品種は固い方だな」 と思いますが何をもって固いとするのでしょうか?

晴れた日、曇りの日、雨の日、晴れが続いたとき、雨の次の日の晴れた日、その日によって硬さが明らかに違います。でも書類では何を求めているのか? どういう測定をすればいいのか?そんな感じでいっこうに作業は進みませんでした。
ほとんど諦めかけたある日、東京の市場の紹介で愛知県のカーネーションの種苗屋さんの専務さんが訪ねてこられました。 色々お話している中で「カーネーションの品種登録をしたいのですが書類の書き方、特に特性表の書き方が分からないので申請をあきらめようと思います」とお話ししたところ 「紙とペンとメジャーを持ってハウスに行きましょう!」と言われ早速ハウスで説明を聞くことになりました。ハウスに着くなり特性表を見ながら「これはここを測定する」「これはこういうこと」 等々説明を受け一つ一つ腑に落ちていきました。そしてあっという間に書類の概要が出来上がってしまいました。
後は仕上げをするだけの状態にしていただきました。 具体的に教えていただくと育てている植物ですからとてもよく理解できます。しかし書類だけ見ていても理解できないのは私だけではなかったと思います。
1品種分かると後は他の品種も同じようにやればよいのでスムーズに作成することが出来無事申請することが出来ました。専務さんには本当に感謝しかありませんでした。 今は品種登録の代行をしていただける業者さんもおりますのでそれを利用する人も多いと思いますが、一度自分でチャレンジしてみるのもとても勉強になり内容も分かりますのでお勧めです。
ただし仕事に余裕がある時期でないとストレスがたまりますのでご注意を!
さらにまだ問題はありました。それは登録にはお金がかかるのです。それも前払いしなくてはなりません。売れてからその売り上げに応じて支払うのではなく先に支払わなくてはなりません。 ある程度の会社になればその負担は些細な額となりますが零細な農家にとってはそれなりの負担となります。
また毎年登録料は発生しますしそれもだんだん高くなっていきます。おそらく登録を維持していくということは「売れているから登録を延長するのでしょ」という論理のようです。 初めて登録するときは登録すること自体嬉しくワクワクしとにかくトライすることに意味を見出すことが出来ますが、その後は登録申請をするかどうか費用対効果を十分検討しなければなりません。 品種登録することと儲かることとは別の話だったということです。

- 次回に続く

2020/7/27更新

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