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種苗法と育種について  ー その3

よく「育種はもうかりますか?」と聞かれることがありますが、答えは難しいです。
そもそも私にはあまりビジネス感覚はありません。あるIT関係のやり手の方とお話をした時に「草野さんのしていることはIT産業から見るとビジネスではありません。 農業の中ではビジネスに近いことをやっているが農業の範疇を超えていません」と言われました。 彼の話を聞いていると本当にビジネスの世界は凄いな!と思ってしまいます。ですからそう言われても別に不快でも何でもありません。 そうなんだビジネスの世界は価値観が違うんだ!と感心しました。
「あんまり儲かりません。」と答えれば「どうして儲からないことを続けているんですか?」と返されてしまいます。 儲かるか儲からないかを求めるのならば、育種よりも今ある良い品種を確実に売り先を確保して採算に合うように生産する方が儲かります。さらに言えば農業よりも他の産業の方が儲かるんじゃないですか?!と言いたくなります。 育種をやるのはそこにこうしたい、こうゆうものを作り出したいという夢や目標があるからです。 現実育種をやるにはどうしたらよいか?
「何をやるか目標がはっきりさせること」
「10年結果が出るまで続けられること」
「その間しっかり栽培出荷で生活できること」こんな感じですかね。
10年と言ったけど5年やって手応えがなければ引き時かも・・・ ただしお小遣い程度の経費で空いた時間でやる場合はその限りではありません。
とにかく育種は金食い虫です。例えば10坪のハウスで育種をすると基本的に10万円経費が掛かります。
100坪やると100万円かかります。そして売り上げは基本的に0円です。
育種にかかる時間は様々ですが綾園芸では交配して種まきをして4〜5年かけて新品種になります。
毎年播種をして苗を5000本作って新品種になるのは5本〜10本です。(これは前段階で良い親を育種してあっての話です。 これに10年ほどかかっています)そこからメリクロンにかけて3年後に販売となります。
交配してから7〜8年かかることになりますね。ちなみに綾園芸では毎年300坪ほど育種に使っています。
育種をする目的は普通2つに分かれます。
育種したものを自分で栽培して有利に販売すること(これを防衛育種と呼びます)。
もう一つは育種してできた品種を種苗として販売すること(種苗会社の育種)。この分野で種苗会社と同じ土俵で戦うのはなかなか厳しいものがあります。 しかし防衛育種の場合はかなり可能性があります。
オリジナル品種は自分だけの品種ですので差別化は当然できます。 他にはないものということだけでそれなりの品質が伴えばかなり有利販売出来ると思います。商売として十分成り立ちます。 ということで儲かるか儲からないかケースバイケースということになります。
ところで最近女性の育種家の話をよく聞きます。特にパンジービオラの世界で女性の育種家の活躍が目を引きます。 そして今までにない繊細で素晴らしい品種がたくさん世に出て来ています。

作出者 宮崎県Aさん 画像掲載了解済み

全くの想像ですが男性が育種をしているときは選抜の作業の時に必ず採算性を重要な指針とすると思われます。 しかし女性の場合は採算性をもちろん考えていると思いますがその優先順位は男性ほど高くなく、「咲いた花を見た時に感じたまま」の評価が重要になっているように思います。 これは一つの要因ですが育種をするときにこの感性の違いが全然違う花を選抜していく大きな要因だろうと想像されます。その意味で今後女性の育種家さんの活躍が期待されます。(男性も駆逐されないように頑張らなくては・・・)
とりとめがなくなりましたが育種・生産現場では種苗法を正しく理解しそれに対処していけば今までと大きく変わるわけではありません。 (正しく理解するといいましたがそのためには普及センター、試験場、JAなどが現場にわかりやすく丁寧に説明する必要があると思います。) ただ自己増殖を認められていたものが認められなくなる品目を栽培する方はそれなりの影響を受けることとなります。しかし種苗法の育成者を保護し育種を後押しするという本来の目的からすると 「今まで登録品種を自家増殖できたのは本来は権利料を払って使用するところを一時的に免状されていた、 しかしこれから免除されなくなる」と考えるしかありません。 一方育成者側からすると保護がより進むので育種のやりがいはより大きくなり、育種により有利な経営ができる可能性が広がると捉えることが出来ます。 というのはこの仕組みを確実に運用していくことはかなりのエネルギーを必要とします。ただ大きな会社は専門のスタッフがおり問題なくこの仕組みを利用していくでしょうが、小さな農家にはかなりの負担になることは変わりません。 負担が大きいので登録するのをあきらめようとする人がいるのではないか?と自分も含め心配になります。そうならないように小さな育成者の芽を伸ばせていけるような後押しをしてもらえたらいいのになと思います。
自分の経験から1番必要なのは実際の書類の作成です。ユーチューブ動画で実際の書類づくりを公開したり、 例えば「カーネーション」「バラ」「キク」どれか一つについて具体的に漫画風の説明書をつくったりするとかなり分かりやすくなるのではないでしょうか? 普及員のスキルの一つとして育種のノウハウと品種登録のノウハウを身に着けるのも割と現実的だと思うのですが、どうでしょうか?
最後に日本の品種開発の強靭化と知的財産権の獲得が進むことを期待します。
一般の購買者の皆さんには、花をみて「あーきれい。素晴らしい。」と感じていただけたら、さらに作出者の費やした時間とこういうものを作り出したかったという思いを少しでも想像していただけたら嬉しいです。

2020/7/29更新

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